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みずしな

泣きそう。町屋良平『生きる演技』を引き続き読んでる。長い。けどおもしろい。ぐずぐずに煮詰まっていくかんじがある。ふしぎな余韻。閉塞感がとても苦しいけれど。どこにも居場所なんかないんだなって、われわれはただの子どもで、行く宛ても帰る宛てもなくて、しんどい記憶ばかりが身体の中に残ってる。忘れられないあの感覚。

 それでしばらく沈黙したあとで、「おれら、子どものころすごくしんどかったけど、どこか、これってなんかお話のなかのことっていうか、ただの作り話なんじゃないかって、そういう気がどうしてもしてて、そのしんどさに集中できなかったな。なんなんだよ。演技の仕事をするようになって、むしろやっぱこれは現実なんだなって、ちゃんとしんどくなってよかったよ」と言い終わるまえにすはすでに笹岡は寝息をたてていた。

「あーなんか懐かしかった。朝まで河原とか」
 それはおれの台詞では、と思った笹岡は、しかし子どもの頃別の川でこうしていた記憶があまりなく、「懐かしい」と口で言うことはむずかしいのだった。そのころに会った誰かのことも忘れている? 薬物パーティーにいそしむ両親に夜は家を空けてくれと言われ、まだ十一歳の身体さえなかったらこんな思いをせずに済んだのにと呪うことで何度も朝をむかえた。同時に、今夜だけは家にいさせてくれと毎晩祈った。そのころ川という景色に保存された祈りと呪いの境界を、われわれだけが記憶している。つまり児玉はいまは笹岡の代わりにそう言った。(中略) 笹岡は明るくなってようやく、家に帰れる気分になった。児玉はこの世界のどこにも身の置き場はないと思っている。

――町屋良平『生きる演技』

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